【マイクロ法人】赤字経営でも役員報酬を確保する方法【役員借入金とは?】

法人が赤字ということは毎年発生する利益より費用の方が大きいということなので、だんだん法人から出せるお金が無くなって役員報酬も出せなくなるのでは..と筆者は設立前に考えていました。「役員借入金」という勘定科目を用いれば対応が可能であり、実際に今はそれで対応しているので紹介します。

赤字経営とは

1年を通して得られる利益が費用を下回ってしまう経営状況を赤字経営と言います。
筆者の法人を例にして確認してみましょう。

マイクロ法人の年間で得られる利益

筆者の法人は資産運用会社なので、保有している米国高配当ETFから得られる配当金が利益になります。

受取配当金\100,000
合計\100,000

余談ですが利益が少なすぎるので、現在はブログを更新して収益化を目指しています。

マイクロ法人の年間でかかる費用

マイクロ法人の維持にはざっくりと下記の費用がかかります。

役員報酬\540,000
社会保険料(会社負担分)\135,000
法人住民税(均等割分)\70,000
その他諸費用(会計ソフトや申告ソフト、バーチャルオフィス等)\100,000
合計\845,000

年間約75万円の赤字

上記の通り利益合計が10万円、費用合計が約85万円なので毎年75万円の赤字です。
資本金は200万円でスタートしているので、普通に運営していたら3年で資金ショートしてしまいます。

役員借入金を利用して法人を維持

役員借入金とは

法人が役員(自分自身)からお金を借りることです。
返済期限も利息もないため、都度仕訳さえつけておけば自由にできます。

役員借入金の仕訳例

例えば、役員が法人に対して20万円の自己資金を貸付した場合の仕訳は次のようになります。

役員側(事業用口座から振込した場合のみ。個人用口座から振込した場合は仕訳無し)

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
事業主貸200,000普通預金200,000

事業用口座から振込する場合は上記のように仕訳します。
ただし、個人用口座から振込する場合はプライベートで支出する生活費と同様に不要です。
事業用、個人用の違いについては下記の記事にまとめているので、もし知らなかった場合はご参照ください。

https://pecorimaru.com/business-or-private/

法人側

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金200,000役員借入金200,000

役員借入金を使用するデメリット3つ

少額であれば問題ないですが、数百万、数千万単位で役員借入金を増やすことでデメリットも発生してきます。
ただし、全ての人にとってデメリットになるわけではないので、内容を理解したうえで運用していくと良いでしょう。

役員借入金は相続税の対象になる

役員借入金は貸付した役員側から見れば債権であり資産なので、相続税の課税対象になります。
ただ、相続税には基礎控除があり、次のような計算で課税となります。

課税価格の合計額 - 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)= 課税遺産総額

参考:国税庁 No.4152 相続税の計算
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

つまり最低でも3,600万は非課税なので、そこまで多くの資産を保有していない人にとってはデメリットになりません(筆者もその一人)

債務超過になる

債務超過とは、貸借対照表の中の純資産がマイナスになっている状態を指します。
赤字経営とは意味が少し異なり、赤字経営を続けた結果として債務超過になるといったイメージです。

筆者の法人は資本金が200万円で、毎年75万円の赤字になっているので、このままいくと3期目の決算後に債務超過の状態になります。

資本金(200万) + ▲繰越利益剰余金(▲75万 × 3期分 = ▲225万) = ▲純資産(▲25万)

負債を返済しきる体力の無い法人ということで銀行から融資を受けることが難しくなりますが、銀行から資金調達するつもりがなければデメリットになりません。

個人として銀行から融資を受けることが難しくなる

債務超過で触れた銀行から融資を受ける話は法人が借りる場合の話です。
こちらは役員借入金の金額に左右される訳ではありませんが、赤字経営の法人を抱える役員は銀行からの融資を受けることが難しい場合があります。

実際、筆者は住宅ローンの借入を申込する際、赤字経営の法人があることを伝えたらとても嫌そうな反応をされてしまいました。個人事業主としての稼ぎがあるので、いったん法人のことは伏せて審査を進めていただけることになりましたが、審査の中で指摘を受けた場合は法人の決算書類の提出を求められることもあるそうです。

役員借入金を減らす方法

上記3つの中で回避したいデメリットがある場合はこれから紹介する方法を実践すると良いでしょう。ただし、デメリットに感じていない場合は回避手段自体がデメリットになるため、そのままにしておいた方が得です。

役員報酬を減らす

役員報酬を減らせば、減らした分だけ役員借入金の計上を圧縮できます。ただし、減らすにしても社会保険料の会社負担分は最低限確保するために12,000円までにしておくと良いでしょう。

役員報酬を減らすデメリット

役員報酬を45,000円 ⇒ 12,000円にした場合、年間で396,000円の損金を抑えることができますが、報酬を受け取る役員側の税負担に変化はなく、利益と相殺できる損金が減るだけとも言えます。

役員報酬の考え方については下記の記事をご参考ください。

https://pecorimaru.com/board-member-reward/

債務免除益を計上する

債務免除益とは、役員側が債権を放棄して法人側の利益に振替することを指します。
例えば20万円分の役員借入金を債務免除益に振替した場合は次のような仕訳になります。

役員側
仕訳無し

法人側

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
役員借入金200,000債務免除益200,000

役員側で貸倒損失を計上して、個人事業主としての確定申告で損金算入することはできないのでご注意ください(税務調査で怒られるはず..)

債務免除益を計上するデメリット

役員借入金を法人側に残しておけば、いつでも次のような仕訳で法人から役員資金移動することができます。
役員側は貸したお金を返してもらうだけなので、もちろん非課税です。

役員側(事業用口座に振込した場合のみ。個人用口座に振込した場合は仕訳無し)

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金200,000事業主借200,000

法人側

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
役員借入金200,000普通預金200,000

上記は債務免除益を計上しまうとできなくなるので、役員側に課税される手段(役員報酬や役員賞与)でないと法人から役員へ資金移動ができなくなってしまいます。

終わりに

筆者は住宅購入を検討していて住宅ローンの審査を控えているため、今期の法人決算が黒字になるように債務免除益を計上しようと考えています。通常は自分の法人の資金繰りを自己資金で賄っているだけの話なので、あまり難しく考える必要はないと思いますが、法人の運営が長くなりそうな場合はこの辺りも考えながら進めていけたら良いと思います。